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武蔵小金井みどりクリニック
首が腫れる病気-甲状腺中毒症について-
首が腫れている!? - 甲状腺中毒症 -
はじめに
甲状腺のご病気についてのご質問が多く寄せられる事もあり、改めてブログに取り上げてみたいと思います。元々は当院で発行している院内報に寄稿した医療コラムに加筆してお届けいたします。
甲状腺って一体何?
甲状腺は首の喉ぼとけを取り囲むようにしてすぐ下にある4-5cm大の蝶々型の臓器です。首の下半分に位置するため、顎からは意外と離れた場所にあります。空気が通る気管の前に位置しており、皮膚の上からその大きさや形を手で触れることが出来る珍しい臓器です。男性は甲状腺の下半分が骨の下に潜り込んで触れにくいこともあります。甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌され全身に作用します。体温調節をしたり、代謝を亢進させたり、心拍数や筋肉の収縮を調節しています。生まれる前の胎児期には胎児の成長に必要なホルモンになります。
このように甲状腺ホルモンは全身の様々な場所に影響を与えるため、分泌される量が多すぎたり足りなくならないように厳密にコントロールされています。

甲状腺の病気
甲状腺の病気は大きく3つに分けられます。
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1. 甲状腺ホルモンの作用が亢進する病気 2. 甲状腺ホルモンの作用が低下する病気 3. 甲状腺に腫瘍(しこり)が出来る病気 |
本ブログでは、①甲状腺ホルモンの作用が亢進している病気について解説したいと思います。
甲状腺中毒症
甲状腺ホルモンの作用が亢進した状態を「甲状腺中毒症」と言い、以下のような症状が現れます。
| ・胸がドキドキする ・汗が多く出る ・暑がりになる ・体温が上昇する ・疲れやすい ・落ち着きがなくなる ・イライラする ・息切れ ・手のふるえ ・不眠 ・よく食べる ・やせる ・下痢 ・月経不順 |
この病態の原因は「甲状腺機能亢進症」と「破壊性甲状腺炎」の2つに分けられます。「甲状腺機能亢進症」とは、甲状腺でのホルモン産生が過剰に亢進している状態で、頻度の高い病気として「バセドウ病」があります。
一方、「破壊性甲状腺炎」は甲状腺に起きた炎症などによって甲状腺に蓄えられていたホルモンが一時的に血液中に漏れ出てしまう状態です。これを逸脱(いつだつ)と言います。代表的な病気に「無痛性甲状腺炎」と「亜急性甲状腺炎」があります。甲状腺中毒症の症状以外にバセドウ病や亜急性甲状腺炎にはそれぞれ特徴的な症状がありますので見ていきましょう。

バセドウ病
バセドウ病は甲状腺中毒症を来たす甲状腺機能亢進症の原因疾患の一つです。甲状腺が大きくなり、人によっては眼が前に出て、目の印象の変化を自覚したり、ドライアイや時には目の痛み・圧迫感、ものが二重に見えるといった症状が現れます。
甲状腺中毒症状に加えて
| ・甲状腺が大きく腫れる ・目が前に出ている ・ドライアイ ・目の痛みや目の圧迫感 ・まぶたのひきつれ ・ものが二重にみえる |
病気の原因は分かっていませんが、自己免疫疾患の一つであり、甲状腺刺激抗体という本来あるはずのない自身の甲状腺に対する抗体が持続的に甲状腺を刺激することで甲状腺機能が亢進してしまいます。
診断には血液検査、超音波検査を行います。検査や治療に関する詳細はこちら(↪️バセドウ病について)をご覧ください。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は破壊性甲状腺炎の一つで、発熱とともに甲状腺がある首の前面に痛みが出ることが特徴です。甲状腺が大きく、硬く腫れ、触れると強い痛みを感じます。時にこの痛みが右から左、左から右へと移動することがあります(クリーピング現象)。これらの症状に加えて、甲状腺中毒症状(動悸、汗を大量にかく、手のふるえなど)が出現します。ウイルス感染が原因と言われていますが、その原因ははっきりと分かっていません。
甲状腺中毒症状に加えて
| ・発熱 ・首の前面の痛み ・甲状腺が大きく硬く腫れる ・甲状腺に触れると強い痛みを感じる ・痛みが移動する ・痛みが全体に広がる |
診断には甲状腺の触診、超音波検査や血液検査を行います。
自然に治る病気ではありますが、痛みや発熱に対して副腎皮質ステロイド薬、NSAIDsやアセトアミノフェンを使用します。甲状腺中毒症状が強い時にはβブロッカーを使用することがあります。
無痛性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎は破壊性甲状腺炎の一つで、その名の通り甲状腺に痛みはありませんが甲状腺が若干腫れ、動悸や手のふるえといった甲状腺中毒症状をきたす病気です。バセドウ病よりも甲状腺中毒症状が軽度であることが多いのも特徴の一つで、甲状腺中毒症の中ではバセドウ病に次いで多い病気です。通常は3ヶ月以内に甲状腺中毒症状は改善しますが、その後数ヶ月に渡り「甲状腺機能低下症」を来します。これは徐々に改善し正常に戻るという経過をたどります。はっきりとした原因は未だに不明ですが、出産やストレス、ヨードの過剰摂取などが知られています。また、橋本病の患者様に見られることがあります。
まとめ
甲状腺が腫れてホルモンの作用が亢進している病気について解説いたしました。これらの病気は症状の経過をお聞きし、甲状腺超音波検査と血液検査で診断します。それぞれ治療の方法が異なりますので、的確な診断が必要となります。忙しいから、年齢のせいだから、疲れているせいだから、と意外と気づかず過ごされていることが多くあります。
意外と身近な甲状腺疾患について思い当たる症状がありましたら、お気軽にご相談下さい。



